昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

…そっち、行くわ。

かっちゃんの声が、耳から入って頭とか胸とか、指の先まで全部に回る。


一旦静まるゴンドラの中。


かっちゃんが口を開く、でもその隙間から言葉が出てしまう前に、遮った。


「離してや」

「……なに、」
「〜離せ…って!!」


つま先で思いっきりかっちゃんのスネを蹴ったった。

ちょっと怯んだ隙に無理やり膝から下りて向かいの席にドカッと座り直す。


「痛っ……てぇ〜〜!!も、ゆうおま…本気で蹴ったやろ…!!」

「エロハゲは絶滅すればエエねん」

「やからハゲてないし…あんなぁ──、」

「よかったやん」


思ったより普通の声が出た。


視線は窓の外に向けたまま。

ああ、観覧車の窓から見たら人ってアリンコみたいに見えるなぁ。めっちゃちっこいわ。何匹おるんかな…いち、に、さん、


「ゆう」

「電話。さくらちゃんからやろ?なに、今から会いに行くん?」

「…あ、うん。そうみたいですわ」


あー…かっちゃんが邪魔するから数え直しやんけ。

しかもそうみたいですわって何。全然おもんないし。


…距離置くって。

しばらく会えへんのじゃなかったん。さくらちゃんがそう言い出したんじゃなかったん?

怖いってゆうとったやん。かっちゃんのこと好きやけどキスより先に進むの、怖いって。

じゃあ何。もう会えるってことは別に平気ってこと?かっちゃんとそういうことになってもいいってこと?


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