昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜



頭がスッと冷えていく。

ビックリするくらい、体温が冷めていって。


近い距離やから、電話の向こう…さくらちゃんの声も、かすかに聞こえた。


可愛らしい、女の子の声やった。


「…え?あ〜…うん、別にエエけど…」

「………」

「ん?…なんよ?怒っとんの」

「…………」


…っていうか。


違う女ヒザに乗っけたまま彼女と通話ってどうなんこれ。どうなんこの図。確かにウチはイトコやけどもそれでも。

しかもかっちゃんの声は妙に甘くって、ああ、なんか、そうなんやなぁって思った。納得した。


彼女に対するかっちゃんは、ウチの知っとるかっちゃんやない。全然違うんやなぁ…って。


かっちゃんが距離置くことなったとか言うからてっきり気まずい状況なんかなぁて思てたけど、心配いらんみたいや。

向こうから電話着てるやん。全然ラブラブやん、変わらへんやん。


そしたらなんかアホらしくなってきて、悲しいゆうより腹立ってきた。


緩まった腕の拘束から抜けようとする。

やのにかっちゃんは、また強引に引き寄せて逃がしてくれへん。


「………っ!?…!?」

「ん…うん、わかった」


こんな男に気ぃつかって声出さんようにしとる自分にも、飽き飽きする。

抵抗して体を後ろに引いたら、ゴンドラが大きく揺れた。

腰に回る、腕の力がまた強まる。



「うん……そっち行くわ」



かっちゃんのその一言で、電話は切れた。