かっちゃんの温度と、声と。
それだけで、陥落させられるにはもう十分な条件やった。
こういう非日常的なシチュエーションに興奮しとるのは、ウチも同じ。
Tシャツから出てきたかっちゃんの瞳に映っとんのが自分で、もうそれだけで、腰がくだけそうんなってた。
かっちゃんの唇が、ウチの下唇を、軽くついばむみたいに挟んで。
「……ふっ…、えっろ」
「ん…、黙れ…っぁ…」
じらすみたいに軽く、軽く交わる皮膚に、体の奥が疼いた。
言うてる。体が。心が。
もっともっとって、アホみたいに。
もっともっと、かっちゃんが欲しいって。
罪悪感とか、熱すぎる温度に溶けてしもたんか。
だってかっちゃんは、さくらちゃんのモンやのに。
いつだってどこだって。
…かっちゃんは、ウチ以外の女の子のモンやったのに。
「かっちゃ──、」
舌が絡まった。と思った、その瞬間やった。
ピリリリリリ…冷えた電子音が、足元からゴンドラ内に響く。
味気ない、初期設定のままの着信メロディー。
それはかっちゃんの、携帯の音やった。
鳴り続ける音からすると、どうやらそれは電話らしい。
一気に正気に戻る。
一体ウチ、なにしてんの…。
かっちゃんは携帯を拾い上げると、通話ボタンを押して耳に当てる。ウチを膝に乗っけたまま、かっちゃんは、
「もしもし……さくら?」
…そう言った。



