昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


さんざん乗り倒して、体力使い切る勢いではしゃいだ。

かっちゃんもウチも絶叫系いけるもんやから、もうほぼ全制覇。


夕方になって、それでもまだ制覇できてない乗り物が、ひとつ。


「あー疲れたぁ。ゆう、おんぶしてか」

「アンタに貸す背中はないわ残念ながら」

「そりゃ残念やわ」


クックと喉を鳴らして笑いながら、かっちゃんはウチの少し前を行く。

かっちゃんのサラサラした黒髪は、触れられそうで触れん距離に、あるねん。


「…そろそろ帰る?かっちゃん」


言われる前に、先に言ってやった。

だってなんか。言われるんはさみしいなって思って。

かっちゃんは振り返って、ウチをジッと見つめる。


「…なぁ、せっかくやから」

「?」

「シメ行っとこうや」


かっちゃんが指差したのは、遊園地のど真ん中。


…大きく位置取って回る、巨大な観覧車。


「────」


ニカッて笑って、またそのまま歩き出すかっちゃん。

夕方のオレンジが、強く差す。



…ひとつだけ、乗り残したモノ。

観覧車。だって乗れるなんて、思ってなかった。

観覧車って、カップルで乗るためのモンなんやないの。

わぁ、綺麗な景色!お前の方が綺麗だよ…とか言っちゃう場所やないの。…え?違う?なんか間違っとる?ごめんだって経験無いねん!!


そんなこんなで普段使わん頭の部位をフル回転しとったら…いつの間にか、観覧車の中やった。


かっちゃんがドカッとイスに腰掛ける。観覧車のワゴンがグラッと揺れる。

観覧車の中は思ったより狭くて、息が詰まる。

ちょっと肩をすぼめて、かっちゃんの向かいに腰を下ろした。


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