昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

お化け役の人は倒れて、しばらく意識失った。

結局なんともなかったから良かったけど、親がずっと頭下げて回ってたことは覚えとる。

あの頃は、かっちゃんの方が背が小さかった。


「…かっちゃんは、変わったよなぁ」


ジュースをすすったら、もうほとんど残ってなくてズズってつまった音がした。


「ちっちゃい頃はよー泣きよったのにね〜」

「うっさいわ」

「いつの間にやらいかがわしい色ボケ男に…」

「いかがわしいて何やねん」


ちっちゃい頃は当たり前に、二人で遊び回っとった。

でも今じゃ、こうやって二人並んでることが珍しいから。

二人で会うことはある。けど、それは部屋ん中ばっかで。こうやってまともに出かけるんは、ほんま、何年ぶりなんやろ。


かっちゃんの隣におったら、懐かしくて。

苦しくて、嬉しくて、ぐわーってなって、うひーってなって、なんかもう、どうしようもない気持ちになる。

きっとこんなことになるなんて、あの時のウチは全く予想もしてなかったはず。


「行かんの」

「へ?」


ボーっとしとる間に、かっちゃんは立ち上がってウチを見下ろしてた。

かっちゃんの手が、ウチの腕をつかむ。


「胃ひっくり返るヤツ、乗るんやろ」

「の…る……っ!!!」


勢いよく食いついたら、声がひっくり返った。

はりきりすぎやろって、かっちゃんが吹き出すみたいに笑った。


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