昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


そんなこんなで結局、遊園地に着いたのは昼前やった。


初っぱなから出鼻くじかれて不機嫌やったけど、着いた瞬間に一気にテンション上がる。

もともとアトラクションとか好きやねん。

何回転もぐるんぐるんループしとるジェットコースターを指差して言った。


「かっちゃん!!食べ終わったら最初あれ乗るでな!!」

「はぁ?胃袋ひっくり返るやんけ…」

「あれー?今日大遅刻したん誰ですかねー?」


ウチがわざとらしく語尾上げてゆうたら、かっちゃんは口を尖らせて黙々とハンバーガーにかぶりつく。

遊園地の中のファーストフード店。いっつも思うけど、遊園地の中の飲食店って値段異様に高いねんな。


ウチが急がせたから、セットもなんもされてない髪。

流れがなくて、ワックスに立てられていない髪の毛は、重力にしたがってへにゃって垂れとる。

ちょっと幼く見えるかっちゃんは、なんか可愛かった。


「ゆうは昔っからそんなんやんな」


ハンバーガーを口に押し込んで、モゴモゴしながらかっちゃんが言う。

机に開かれた包み紙には、取り除かれたピクルスが放置されとった。


「そんなん?」

「怖いもの知らずってゆうか。…なぁ、覚えとる?ちっちゃい時にお化け屋敷入ってなぁ、ゆう、お化け役の人に本気で蹴り入れてんで」

「そ…っ!!んな、なんで覚えとんの…」


イトコ一家で近くの遊園地に遊びに行った時、お化け屋敷に入ったときのこと。

だってあれは、お化けがかっちゃんを泣かすから。

ウチが守ったらな!!…て思たら、思わず跳び蹴りしてもててん。


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