「ごめん。私、嘘ついてた」
「え?」
私は初めて、彼に向かって笑うことができた。
思えば、こんな風にちゃんと彼と向き合うことすら、初めてかもしれない。
だって私は、何かに怯えて、ずっと彼の視線から逃げていたから。
何も失うものなんかないはずなのに、何かを失うのが怖かったんだ。
彼を真っ直ぐ見つめて、私は続ける。
「本当は違うよ。誰にでも一緒なんかじゃないよ」
「……どういうこと?」
「あの子だけは特別だって、ちゃんとわかるよ」
私の言葉は、彼をいつも見つめていたことを、暗に物語っていた。
そして、私にとってそれは、紛れもなく告白だった。
きっと、彼がそれに気付くことなんて、ないんだろうけど。

