「誰にどう見えたって、川島君にとって彼女が特別なんだったら、追いかけて伝えなくちゃ」



――“川島君”。


心の中で何度も繰り返した彼の名前を、初めて口にした時、私の胸は大きく波打った。



こんな時に、こんな状況で呼べたって、全然嬉しくないはずなのに……


それでも、私の鼓動は、一気に速度を上げて、

彼に聞こえてしまうんじゃないかってほど、大きな音で揺れていた。



「岡本さん……いや。いいんだ、もう」



素直な気持ちと、ちょっとの意地とかいろんなものと、彼は笑顔の奥で戦っていたのだと思う。


だけど、崩れ出してしまいそうな笑顔を、必死に守る彼の表情が、

私にはもう、泣き顔にしか見えなかった。



私が好きになった笑顔は、私ではつくれない。



彼が誰のものだっていい。


私のことなんて、すぐに忘れちゃったって構わない。



私は、大好きな、彼の真っ直ぐな笑顔が消えてしまうことの方が嫌なんだ――