皐、あなたは今なんて言ったの?
…お父さん?
それは冗談?
何言ってるの?
あれは…椿のお父さんよ?
あなたのお父さんなわけ…ないでしょう?
足音が静かな廊下に響き渡る。私たちに気づかず、こちらに向かってくる椿のお父さん。
ぷつん、と何かが切れる音がした。
息をするのにやっとだった。
皐の肩に掴むのに必死だった。
これは夢ですか?
夢なら醒めてよ。
こんな夢…いつまでも見ていたくない。
「…何やってんだよ…親父!!」
叫ぶ皐。
その声に気付いた椿のお父さんはこちらを凝視した。
その光景を疑うかのように。
きっと額には汗を掻いているはず。
もう逃れられない。
本当の、真実。
「…さ…つき」
椿のお父さんが皐の名前を呼ぶ。
心の中で願っていた。
皐を見て「あなたは誰?」と言ってくれるのを。
でも残酷ね。
私の願いは無惨に散ったのだから。


