想うのはあなたひとり―彼岸花―



何も出来ない私に腹が立つの。

力尽きてしまったのか、私はコンクリートの床にしゃがみ込む。
あんなにも癒されていた潮の香りが今では痛いと感じてしまう。



「妃菜子、俺の背中に乗れ」




「…え…」




「俺が運んでやるから。大丈夫だって。見るからにお前軽そうだから。任せろ」




そう言って皐は私を背負った。太ももにあたる皐の手に意識してしまう。




「…大丈夫?」



「余裕だって。お前軽すぎ。ちゃんと食ってんの?」




「ありがとう…」




広い肩幅。筋肉質の腕。
さらさらな茶色の髪の毛。
香る、香水の匂い。
潮の香りより今はこっちの方が癒される。




「なぁ、妃菜子?俺はお前の傍から居なくならねぇから…安心しろよ」





なぜ、いつもいつも皐は私が欲しがっている言葉をくれるの?


甘えちゃうよ。
あなたという存在に甘えてしまうよ。




階段を下りていく。
東口には保科さんの車が停まっていた。