想うのはあなたひとり―彼岸花―



涙でぐちゃぐちゃになった私を見て、皐は言葉を失っていた。ごめんね、皐。
約束を破っちゃったね。
あなたの前では笑顔をになると約束したのに、泣いてしまった。
でも今日だけは…今日だけは許して…。




「お前…どうしたんだよ?何かあったのか?」



両肩を掴み、私の顔を覗き込む皐。
私はゆっくりと息をして生きていると確認する。
息をちゃんと吸い込むことができるのに、こんなにも体は温かいのに、本当に椿は冷たくなってしまったの?




「つ…椿が…椿が…!!」




私の慌てぶりを見た皐はきっと何かに気がついたのだろう。
そういう勘は優れていると昨日言っていたから。




「妃菜子、部屋入るぞ。財布と携帯があればいいだろ」




そう言って私の部屋に入り、貴重品を持ってきた皐。
そして下駄箱の上に置いてあった鍵を持ち、私の手を握った。




「え…」




「行くんだよ!!椿んとこ行くんだ!!椿の一大事なんだろ!?早く行くぞ!」






私の手を強く握り、走り出した皐は私の英雄だったの。