落ちていくグラス。
割れるグラス。
飛び散る牛乳。
崩れ落ちる体。
私はもう何も聞けなかった。
突然聞かされた真実を私は放り投げてしまいたかった。
『妃菜子ちゃん!!妃菜子ちゃん!?』
電話越しで保科さんが私のことを呼んでいる。
私は携帯を持つ力も無くなった。
フローリングに身を預け、何もできない無力な自分がそこにいた。
どうして…なぜ…
私には分からないよ…
あなたはもういないの?
生きていないの?
そんなの…信じないよ。
信じたくないよ…。
「妃菜子!!妃菜子!!」
玄関のドアの叩かれる音が激しく鳴り響く。
この声は…皐…。
ゆっくりと目を開けるとそこに広がるのは私の生きる世界だった。
誰かに、助けてもらいたかった。
私は体を引きずり、玄関を目指す。
そして鍵を縦に回した。
「妃菜子!!すげぇ音したけど大丈夫かよ!!」
そこには心配する表情をした皐がいた。
もう私は二度と椿に逢えないの?


