想うのはあなたひとり―彼岸花―



近づく距離が、私に恐怖を与える。
下を向いて歩く皐は今一体何を考えているのかな。
心を覗いてみたいけど、私にそんな力もなければ勇気もない。

何て言われるのかな。
殴られる覚悟はできている。
気がすむまで殴っていいから。


悪いのはすべて…私です。





「妃菜子…お前は俺を騙してたの?そういえば前に言ってたよな。彼氏は少し遠い場所にいるって。それって…少年院?犯罪を犯したから会えないってこと?本当のこと…言ってよ」





“本当のこと”
嘘はないということ。
心臓が今までないくらい揺れている。
怖い…怖いけどもう嘘をつきたくない。
私は怖いという感情を押し殺して、ゆっくりと顔を上げた。

そこには今にでも泣きそうな…
皐がいた。





「…騙してたわけじゃない。確かに最初皐を見たときは驚いた。椿に似ていたから…でも本当のことを言えなかった…」





ごめんね、皐。
あなたを傷つけてしまった。