想うのはあなたひとり―彼岸花―



忘れたかった過去が、鮮明に頭の中を駆け巡っていく。


街を破壊していく台風。
地面に打ち付ける激しい雨。
不気味に聞こえるテレビ音声。反射する銀色ナイフ。
フローリングに飛び散る真っ赤な血。

包み込むあなた。
それに応える私。


横たわる母親の前でキスをした私たち。



犯罪者となったあなた。
被害者となった私。




零れ落ちた涙はアスファルトに染み込んだ。
皐は固まったまま何も話さない。
それほど衝撃的だったということだ。




「ちょ…ちょっと待ってよ?それって本当?頭がついていかないんだけど…妃菜子に彼氏がいるのは知ってたけど…え…なんだよ…それ」




「このことを知ってるのは中学が一緒だった玲奈たちくらいよ?事件があったすぐに花本さんは引越しちゃったし。それにきっと彼女は言いにくかったと思うわ」




「なんで…?まだ何かあんの?」