想うのはあなたひとり―彼岸花―



時が止まる。風が止む。
歪む視界。痛む左脳。



溢れ出す、涙。



フラッシュバックしたせいか、しばらく現実の世界を受け止めるのに時間がかかった。


嘘でしょ?まさか。
早く…夢から醒めさせて。
この夢は心臓に悪い。
全然楽しくないわ、こんな夢。


でもこれは夢なんかじゃなかった。
現実の世界だった。



玲奈が一歩、私に近づく。
金縛りにあったような感覚の私は、そこを動くことすら出来ずにいた。




「お久しぶりね。花本さん?椿くんとはあれからどうなったの?」




そう言うと玲奈は私の左手を掴み、薬指の指輪を触った。
その瞬間、体中に寒気が走った。




「…まだ続いてるんだ?あんなことがあったのに?彼はまだ少年院でしょ?」




何も言い返せない。
言い返す言葉が見つからない。
手を離して。
あなたに触れられたくない。





「…ちょっと待って?話が全然見えないんだけど」





だめ、皐。
聞いちゃだめ。