想うのはあなたひとり―彼岸花―



罵声を体で浴びた。
汚い言葉を全体で受け止めた。


涙を流すことを忘れてしまったのか。
私には泣く気力さえなかった。

母親の足で踏まれた彼岸花は、くしゃくしゃ、と音を出して死んでいった。
その姿が私そっくりで思わず凝視してしまう。




「死んで欲しいなら死んでくださいって言いなさいよ!!ほら!はやく!!」




暗闇の中から青白い母親の手が伸びてくる。
行き着いた場所は私の首だった。

徐々に強くなっていく握力。


この時、ようやく私の体は動き出した。



「や、めて…」



瞳からは涙が溢れ出し、流れていく。
そう言っても母親はやめようとはしない。
母親の目を見て訴えようとするが、目にはスモークガラスのように曇っていた。



「死んで欲しいなら殺してみなさいよ!あんただけ幸せになんかさせないんだから…!!」





ねぇ、お母さん。
何故私を産んだの?