想うのはあなたひとり―彼岸花―




「俺、教室戻る。真面目に授業受けてくるわ」




「待って…私も…」




「妃菜子はここにいろ。もう少し頭を冷やせ。でもこれだけは渡しておく」




突き放される言葉は当然だと思う。
自分でも分かっているから。

すると皐は私に紙切れを渡してきた。
私は恐る恐るそれを受け取る。



「俺の携帯のメモリ、4件しか入ってないんだ。母親、父親、弘樹、バイト先。信用してる奴にしか教えてない。何かあったらいつでも連絡してきて。女で教えたのは妃菜子が初めてだから」




皐は見下ろしながら私にこう言って、屋上から出て行った。



受け取った紙に書いてあったのは、皐の携帯番号とアドレスだった。




“何かあったらすぐ連絡して。飛んでいくから。


080521…89
sathuki-xxx-@…jp





「なんで…?」




何故私にこんなことをしてくるの?
私はあなたを傷つけたのに。




ポケットに眠る携帯を取り出して新規メールを作成する。
宛先はない。


本文は…たった一言。





“会いたい”