赤面しながらそう言った皐に私はただ驚いていた。
誰もいない屋上に響き渡る声がとても澄んでいた。
「な…に言ってんの?」
「恋人だったらするだろ。それくらい。考えただけでムカつくけど」
「意味わかんない」
そっぽを向いてみる。
理解したらすごく恥ずかしくなったから。
思い出してしまった。
あの…皐の唇。
すると皐は私の腕を掴み、無理矢理顔を向かせた。
まだ皐の顔は真っ赤。
あの前に見た弘樹のゆで蛸姿と同じだ。
どきん。
なんか…いつもと反応が違う。
今までは、“どくん”だったのに。
今日は…“どきん”だ。
「妃菜子…キスしていい?」
真剣な瞳から目を離せなかった。
もし離してしまったらどこかに行ってしまいそうだったから。
だって、皐は捨て猫だから。


