想うのはあなたひとり―彼岸花―




「でもさ、ちょっとくらい教えてよ?どこで出逢ったとか、どんな顔してるかとか、思い出とか。俺も話しただろ?奈月のこと。今度は妃菜子の番だよ?」



教えて欲しいの?
そんなにも知りたい?
知ったら逃げるでしょう?



出逢った場所は幼稚園。
顔はあなたにそっくり。
思い出は、真っ赤な血。



これだけ言ったら分かるかな。でも胸にしまっておくよ。
今は言いたくない。
自分でも分からないから。
今の気持ち。
椿に会いたいけど、皐の隣も心地が良い。



あたし…サイテイ。




そんな時、スカートのポケットに眠っていた携帯電話が震えだした。
びくりと体は反応する。
慌てて携帯を取り出し、液晶画面を見つめてた。





着信 保科さん




きっと椿の話だ。
保科さんは椿以外のことで電話などしてこないから。



「電話?出ていいよ」



「ありがと…」





もうすぐ、梅雨が来る。