想うのはあなたひとり―彼岸花―



ガタン。
電車が激しく揺れた。
それと同時に激しく私の心も揺れた。



「え、皐ってこの辺に住んでたっけ?」



「うん、最近。住んでる場所は教えないよ?誰にも知られたくないから」



体育の時間、小絵が言っていたことは当たっていた。
皐は自分を知られること嫌う。仲の良い弘樹にすら言わないのだから本当に嫌なんだろう。
でも弘樹も偉かった。
そこで問い詰めたりしないから。
「そうなんだ」と納得して違う話に切り替えていたから。



皐は黙ったまま何を考えていたのだろう。
茜色に染まる世界を見つめて何を思っていたのだろう。



やっぱり私にはあの魔法が必要かな。




「じゃあ皐、妃菜子ちゃん、また明日ね」




「皐、明日は遅刻すんなよ?」


閉まりかかるドアの隙間から小絵と弘樹がバイバイと言った。私はそれに応えて改札口に向かう。
皐は何も言わずに私のあとを追ってくる。