想うのはあなたひとり―彼岸花―




呼吸が出来なくなった。
血液が流れるのをやめた。

時間が、何もかもが止まった。



私はその返事を書けなかった。くしゃっと紙を丸めて鞄の中に押し込んだ。
皐は私の行動を隣で見ていたが何も言わなかった。



怖かったの。
あんな文字を見たら。
嬉しさより怖さが増した。



私には椿がいる。
彼を裏切ることなんかできない。
この左手の薬指に誓ったの。
ここの存在は椿しかあり得ないと。
だから毎日、椿がくれた指輪をしているの。

本当は埋め込みたいくらい、私は椿を愛している。



でも皐は私の中に踏み込んできた。
私の気持ちなど知らずに。
優しくしたり、助けたり。
急に冷たくしたり。
私は戸惑ってばかり。




なぜこんなにも恋は難しいのかな。
誰か簡単にできる方法を見つけ出せますか?




私はそれから一度も皐を見なかった。




心を奪われそうだったから。