想うのはあなたひとり―彼岸花―



とくん、とくん。
どくん、どくん。


やめてよ、だんだん音が大きくなっていく。




そしてバスは警察署へと私たちを運んでいった。



警察署に着いたときはお昼近かった。
ここに来るのはいつぶりだろう。
事情聴衆をしたときと、お父さんと対面したときと…椿と離れたとき。



半年ぶりだ。
何も変わっていない。
私も何もかも。
ちゃんと地に足ついてる?
私、地面を踏んでるよね?


私…生きてるよね?



「妃菜子?どうかした?顔色悪くない?」




「大丈夫だよ。行こ…」




一歩足を踏み出したとき、後ろから声が聞こえた。




「妃菜子ちゃん?」




聞き覚えのある声。
当たり前か、昨日も聞いたのだから。
後ろを振り返ると、正解した。この声は保科さんだ。




「あれ?学校は?今日はどうしたの?」




「あ、今日はその…友達の用事で。」




そう言って私はすばやく皐から手を離した。
保科さんに見られたらちょっと厄介だから。
椿に伝わるのではないかって。



「…君、名前は?」




すると突然保科さんは皐の肩を掴み、低い声でこう言った。
初めて見る保科さんの表情。






誰か知っていますか?
十五歳は、大人ですか。
それとも、子供ですか。



大人にしか知らない事情を知ってはいけませんか。