手を繋いだままだった。
離したくなかった。
一秒でも温もりを感じたかった。
移り変わる景色をただ黙って見ていた。
きっと皐は奈月さんのことを思い出しているのでしょうね。
私は乱れる呼吸を気づかれないように必死だった。
なぜならばS町の隣の町は私の生まれた町だから。
椿と出会い、一緒に育ち、そして別れたあの場所がある。
この町に来るのは事件以来だった。
懐かしい景色が広がる。
それを見るたび、胸が苦しくなる。
あ…ここはあそこだ。
今電車が通った場所は河川敷だ。
彼岸花がひっそりと咲いていた場所。
彼岸花の花言葉を聞いた場所。椿との思い出の場所。
ちらっと横を見ると車窓から風景を見る皐の横顔があった。
こんなにもあなたにそっくりなのに。
なぜあなたは私の隣にいないのだろう。


