想うのはあなたひとり―彼岸花―



帽子を被り直しながら駅員はこう私たちに言った。
その言葉を聞いて小さな光が見えた。


全身が震えだす。



「それで…その中身は?」



皐は黙ったまま何も話さない。会話をしているのは私だ。
何も言えないのだろう、きっと。




「一週間経っても取りに来ないからさ、合鍵使って中身を見たんだ。そしたら一通の手紙が入っていた。本当は処分するつもりだったんだけど…あの子のことが離れなくてね。」




奈月さんが残したものは一通の手紙だった。




「手紙は今あるんですか?」




そう聞くと駅員は首を横に振った。
まさか…そんな。


もうなくなってしまったの?




「…警察に渡したんだ。渡しに言ったら聞かされたよ。亡くなったってね。君があまりにも似ていたから思い出したよ」




「ありがとうございます。教えてくれて…」




「今、その手紙があるか分からないけど行ってみるといいかもしれない。隣町の警察署だよ。」





「はい、本当にありがとうございました」






皐、聞いてた?
手紙…あるといいね。
私はずっと手を握っているから、大丈夫だよ。
逃げないで、奈月さんの想いを受け入れようね。