想うのはあなたひとり―彼岸花―



鼓動が高鳴った。
とくん、と弾み激しくなった。そして急に熱が出たように体が熱くなっていく。



「…だめ?俺が逃げないように握ってて欲しいんだ。」




真剣な眼差しで真っ直ぐ私を見る皐。
心が奪われていく。



椿が…


椿が私に手を差し伸ばしているように見えたのだ。
優しく笑い、“おいで”と言っているように。



だから私は躊躇うことなく手を出したのだと思う。
決して皐が好きという感情ではなく、椿の残像に手を差し伸ばしたのだと。
そう…思っていた。



皐の手を握ると、皐の残像は消えた。
目の前にいるのは皐。
私は椿の手ではなく皐の手を握っているのだ。

椿以外の男の人に触れるのはこれが初めてだ。
でも、嫌ではなかった。
椿にどことなく温もりが似ていたから。



椿、誤解しないでね。
私は皐がこの世界からいなくならないように手を握るの。



気持ちはこれっぽっちもないから…。