想うのはあなたひとり―彼岸花―



そう言うと小さく頷く皐。



「奈月さんも偉いよ。ちゃんと花言葉に気持ちを込めたんだから…なのに私は…」




椿に気持ちを言ったことがないのだから。
“好き”だとちゃんと言ったことがない。
本当に私は情けなかった。



「…妃菜子?」



「何でもない。探しに行こっか」




「でも今日から授業始まるんだよ?さすがに初授業からサボりはまずくない?」




「今しなきゃいつするの?明日死ぬかもしれないのに。思ったことは今しなきゃ。」




「じゃあ…お願いがある」




皐は鞄を持ち上げ、私にゆっくりと手を左手を差し伸ばした。
その瞬間椿の残像が浮かぶ。




“俺の左は妃菜子専用だから”





ねぇ、椿。
こんな偶然ってあるのかな。




「皐って…左利きなの?」




「うん、そうだよ。俺のお願い聞いてくれる?」





「…なに?」




「ずっと手を握ってて?」