想うのはあなたひとり―彼岸花―



そんなの、当たり前だよ。
私だって消して欲しいとは思わない。

でも、でも。


私は納得できなかった。
人には忘れられない過去があるのは当たり前のこと。
言えない過去があるから今がある。
無理矢理消さなくたっていいじゃない。
私たちはそれを望んでいないのだから。
望んでいるのは、輝く未来だけでしょう?




「ロッカーの鍵を開けたら奈月が消えちゃうんじゃないかって不安なんだ」




皐の言葉に胸が打たれた。
あんなにもお調子者の皐が見せた弱い部分に私は言葉を失った。
過去の話を聞いて私と似ていると一瞬でも思った自分に腹が立った。
全然似ていないじゃないか。
私の場合、椿は生きていて少し遠い場所にいる。
でも皐の場合、奈月さんは犯人に殺され、私たちの知らない未知の世界へと行ってしまった。

私は椿に会えるけれど皐は二度と会えない。
だからロッカーを開けれないのだ。


奈月がまた消えてしまいそうで。