【剣】 以前、奥に上がった時にそうだったからわかっていたけれど、 正室と違って、 側室としてお城に上がる時には当然、祝言なんてものはなくて、 私は白無垢にも袖を通さず、三三九度もなしで、ただ奥御殿に迎え入れられた。 それが普通で、 当たり前で、 大名家でも他の上級の武家でも、それは同じだった。 けれど── 円士郎は、私を奥へ召し上げる日、 正室を娶る時のように、 夜、形だけの祝言を上げてくれた。