「…い………」


何かを言おうとしたが、矢央は奥歯を噛み締め俯いてしまう。

流れ落ちた黄金色の髪が風に揺れ、藤堂と沖田は互いを見合った。


微かに震える矢央の手は、いつまで経っても藤堂の手を放そうとしない。


「矢央ちゃん……」


声をかけると負傷した腕を握る手にさらに力が籠もった。


うっと細めた目で、藤堂は矢央を見つめていると、


「痛い…ですよね…?」

「……えっと……」


痛みが走るのは当然だ。
藤堂の羽織りの袖は肉とともに斬れ、鮮やかすぎる赤が滴り落ちているのだから。


だが自分を守ったために負傷したために、この震える少女に痛みを感じないフリをしてみせる。



「この程度なら大丈夫さ」

「大丈夫なわけっ…ないじゃない」


勢い良く上げられた顔を見て二人は眼を見開いた。

矢央の大きな瞳に涙の粒が溜まり、今にもポロッと落ちそうになっている。


「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ」

「矢央ちゃん……」


いつも明るく振る舞っていた少女が涙に濡れた瞬間、壬生の狼と恐れられた男達は堪らなく愛しさを感じた。