斬られると思った瞬時、閉じられた瞼がピクリと動く。



……痛みに襲われない。


まさか刀で斬られたら痛みもなくあの世に行けるのか。

なんて考えに至ったたが、身体に感じる重さに眼を開き、まだ自分が斬られていないことに気づく。


「……っ……矢央ちゃん、大丈夫?」

「……とう…ど…さん?」


見上げると眉間に皺を寄せ脂汗を滲ませた藤堂の顔が真上にあった。


矢央の背後に立った男に気付いた藤堂は素早く動き、矢央を自分の腕の中に匿ったのだ。


その時負わされた左腕の傷から、ボタボタと血が滴り落ちている。


「このっ、死に損ないめっ!!」

「…っごちゃごちゃと、うるさいんだよっ!!」


藤堂を負傷させた男が斬りかかろうとした瞬間、藤堂は刀を握り直し下から上へと男を斬り上げた。


「ッガアッ!?」

「……あーあ、これで話聞けなくなっちゃった」


血飛沫を上げ倒れた男を見て藤堂はぽつりと呟いた。

藤堂が斬った男が最後の一人だったのだ。


「藤堂さん、大丈夫ですかー?」


二人を斬り捨てた時についた白刃の血を懐紙で拭き取り鞘に収めた沖田は、左腕を負傷した藤堂のもとに歩み寄る。


四人の浪士は見事に彼らにやられ息絶えていた。


「ん、ちょっと深いけど…何とかってとこかな」

「矢央さんを狙うとは卑怯な輩ですね」

「それより、早く局長達に知らせないと―…って、矢央ちゃん?」


痛みを感じる腕が何かに触れられ重みを感じ、その左腕へと目をやる二人。