ある程度距離を開け尾行を続けていた。


それにしても、現代でいえばまだ夜の八時頃なのに通り過ぎる人はいない。


ザッザッと砂地を蹴る音に敏感になってしまう。





気付かれてしまったら身も蓋もない。


静かな外で尾行を気づかせないために距離を取りすぎ、門を曲がった時には既に二人を見失ってしまった。



「………うそ………」


永倉、原田の姿はなく、見えるのは灯りのつかない京の町。

仕方なく尾行を諦め帰るにしろ、尾行に集中しすぎていた矢央は通って来た道がわからなくなってしまった。


「どうしよ………」


これは困ったというものじゃないと、矢央もわかる。


この時代は不便だと改めて知る。


現代で道に迷ったとしても、直ぐ交番くらい見つかるし、ケータイだってある。


だけど、そんなものこの時代には無いので、矢央は道の真ん中で途方に暮れてしまった。


もうっ、あの二人のせいだっ!

濡れ衣とは、まさにこの事である。


いつまでも立ち尽くしているだけでは埒があかず、矢央は取りあえず分かる場所まで戻ってみることにした。