「間島っ、そっちの手が空いたらこっちも頼む!」

「はいっ!」


御所に駆け付けると、既に戦は激しさを増していた。


大砲に銃までも交えた戦を見、初めは恐怖した矢央も、次々に運ばれてくる怪我人を前に正気を取り戻し治療に奮闘した。



「ウウッ……」

「大丈夫ですよっ! 今すぐ手当てしますから、頑張って!」



軽い手当てしか出来ない矢央は、山崎の負担を少しでも減らしたいと動き回る。


額の汗を拭う暇すらなかった。



「山崎さん、みんなは大丈夫かな?」

「わからん。 味方も敵も入り交じってるからな…。せやけど、あの人らは簡単に死にゃせんやろ」


てきぱきと傷口を縫いながら話す山崎の隣で、指示通りに動きながら激しい戦場の方角へと意識を向ける。


近藤と土方は、矢央の視界に入る場所で隊士たちに指示を送っているので無事はわかるが、他の隊長たちは戦場のなかで戦っている最中なのだ。



「気になるんか?」

「……はい。 ぜんぜん戻ってこないから」

「お前が気になってる人らは、我先に戦に飛び込んでく人らやからなぁ。 お前も気苦労が耐えんな」

「それは、山崎さんだって同じでしょ」


山崎だって、本職は観察方なのだから土方の役にたちたいだろう。


だが矢央を一人にすることも出来ず、怪我人を放っておくこともできない。


いろいろと気を使うのはお互い様だといえた。



「行ってこい。 あん中にも怪我人がおるやろうが、こっちに来れん場合もある。 そいつらの手当てを出来る範囲でやってこい」
「いいのっ!?」


土方には御所の中には入るなと言われていた矢央は、思わない提案に驚きを隠せない。


土方に忠実な山崎が、まさか御所内に行く許可をくれるなんて。


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