それは突然のことで、新撰組屯所前には隊士たちの人垣が出来ていた。


買い出しに出ていた矢央は何の騒ぎだろうと、見知った顔を捜しだすと、


「これは、何があったんですか?」

耳に優しい女子の声に振り返ったのは、観察方の島田である。

体格は新撰組一だが、見た目に反し温和な彼が矢央は好きだ。

「間島君か。 いやぁ、局長がね」

何故か言葉を濁す島田。

矢央は、更に気になり人垣の後ろでピョンピョンと跳ねてみるも、結局原因をつきとめるにはいかない。


「軍中法度。 通常の隊規とは別に戦などに向け、局長が新たに設けた隊規だ」

「斉藤さん! 軍中法度? それは、どんな?」

「どんなもなんも、局中法度に更にわをかけたようなもんだな。 んでもって破ったもんは、やっぱり切腹ときた」


斉藤に続き原田もやってきて、はあとわざとらしいため息を漏らす。

このことは局長と副長で取り決めたもので、隊長たちも本日初めて知らされたのだった。


「こんなもん作って、更に脱走者が増えても知らねぇぞ」

「脱走者ですか……」


矢央自身は局中法度を恐れ脱走したわけではないが、脱走と聞くと心が重い。


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