「…なんだありゃ。 女を捨てるだの、新撰組に尽くしてくれたまえだの」


近藤が去った方を呆れた様子で見つめぼやいた原田。

永倉はそれに賛同し頷く。


「最近は、ずっとあの調子だな」

「まあまあ、それより矢央さん。 いくら暖かいからと言って、濡れたままではよくないですよ」


悪くなった空気を和ませようと、また矢央に話題を戻した山南は、庭におりると矢央の肩にかかっていた手拭いを取りわしゃわしゃと髪を拭った。


「わっ! 山南さんっ、ちょっと痛いですってぇ!」

「貴方は少し周りを驚かせすぎですから、ちょっとした報いとして受けなさい」

「ええ〜、なんか違うような…」


文句を言いつつ、おとなしく髪を拭ってもらう矢央。

手荒かったのも最初だけで、次第に優しく拭う山南と、日溜まりの中嬉しそうに拭われている矢央。


「なんか、親子みたいだね。 あの二人」

「山南さんは、何気に一番矢央を気にかけてるからなぁ」

「ああゆう光景は和むぜ」


二人を見て、いつまでもこんな平穏が続けばと願う。


とある日常の出来事が、いつか酷く恋しくなるなんて、今は誰も思っていなかったー―――


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