六月半ば、京を彩る色は桃から生き生きとした緑に変わる。

真上から見下ろす日差しは日毎に強さを増し、もう夏がそこまで迫らんとしていた。



「なんてことしてんだよーっ!」

屯所中に響き渡るは、藤堂平助の声である。

何があったかと駆けつけた面々は、庭先に目を向けると藤堂と同様に目を見開き固まっていた。


彼らが見る風景はいつもと変わらず、眺め良い庭の風景かと思いきや、その一角に予想だにしなかった光景があったものだから、藤堂が叫んだのにも頷ける。


「矢央、お前なんで…」


永倉は、また突拍子のない矢央の行動に息を呑んだ。


振り返った矢央の首筋は、やけにすっきりとなっていた。


「もう…みんな大袈裟な。 髪を切っただけじゃないですか」

「切ったって…切りすぎだろ」


後頭部に手を当て、バサバサと残り毛を払い落とす矢央は、そのまま井戸に向かうと、水を汲み髪を洗い流した。


バサァっと、綺麗に髪を洗い流し手拭いで拭った髪は真っ黒に光輝く。


「前から切りたかったんですよね。 髪色が揃ったら切るつもりだったんで、大袈裟に騒ぐことじゃないですよ?」


腰まであった長い髪は以前は黄金色に輝き、見るも珍しいその色に皆目を奪われた。

が、本来は日本人なので黒髪だった矢央の髪は、長い間染めずにいたので、黒髪と黄金色のなんとも可哀想な髪だったのだ。

それが気に入らず、ある程度黒髪が伸びたら切ろうと決めていたのだが、この時代女子が髪を切るのは滅多にない。

しかも、首筋までバッサリなんて。


だから彼らは驚き戸惑った。

また、何かあったのかと。


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