池田屋事件の後、京の町は殺伐とした空気が漂った。

取り逃がした浪士の残党捜索に荒れ、京の民は活気を無くすかと思われたのだが、



「祇園祭ですか?」


部屋にお茶を運んで来た矢央を出迎えた言葉に、矢央は目を輝かせる。


災厄除去を祈るための京の有名な祭りが、今年も行われることになった。



「あんなことがあった後だし、祭りは中止だと思ったんだけどねぇ」

「だな。 ま、災厄除去だし?」

厄払いをしようと思ってという、新選組への当て付けのように思え苦笑いを浮かべる。


「まあまあ、何にせよお祭りなんです。 楽しんだらいいじゃないですか?」

「あのっ!!」


部屋の住人達の会話を割り、矢央は興奮気味に体を前のめりに突き出した。

皆、矢央を見て言葉を待っている。


そわそわと肩を揺らし、頬を赤らめる少女特有の可愛らしさに、皆心が和んだ。



「あのっ…そのお祭り、みんな行くの?」


期待に満ちた双眸で見つめる。
やはり聞いてくると思ったのか、原田はガハハと笑い出す。



「ほらな、矢央は色気より食い気じゃねぇか」

「はい……?」

「いやね、島原に飲みに行こうと言ってたんですが、矢央さんはお酒より、お祭りを楽しみたいでしょうねって話してたんです」


何故笑われたのか、原田の言った意味が理解出来ずにいた矢央は、沖田の言葉に大きく頷いた。


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