「ゲホッ……ゴホッ!」
自由になった二人の前に、刀を構えた土方、永倉、斉藤が立っている。
動けなかったはずなのに、と困惑するお華は一歩後ずさった。
「どうし…て…」
「あれしきのこと、気合いでどうとでもなろう」
「いやいや、それお前だけね」
永倉は空笑いで、自身の太ももに目をやり溜め息を吐いた。
太ももからは赤い血が流れていて、土方も同様だ。
無傷で呪縛を解いたのは斉藤のみ。
「さあて。 そろそろ帰らせてくんねぇか。 俺たちには、まだ仕事が残ってんだよ」
土方は咳き込む沖田を支えながら、お華に剣先を向ける。
ふるふると、首を振るお華。
「いや…。 どうして…私じゃなくて…その子を守るの?」
「………」
土方は睨むのを止めず、お華はまた新しい涙を流した。
「歳兄ぃ…どぉして…ぇ…」
懐かしい呼び方だった。
まだお華が小さかった頃は、土方や近藤のことを兄と呼んでいた。
あの頃を思い出すと、とても心が休まる。
「こいつを守ってるつもりはねぇ。 こいつは、新選組隊士だ。 己の身くれぇ、己で守らせる」
「ケホッ! 私だって、土方さんに守られたくないですよ! 借り作りたくないしっ」
「ああ、そうかい。 なら、易々死んでやるんじゃねぇよ」
痛む体を支えながら、一歩前に出る。
―――パチン!
乾いた音に、その場にいた全員が驚いた。
矢央がお華の頬をひっぱたいのだ。
肩からサラリと、黒髪が流れ落ちた。
唖然としたままのお華に、矢央は伝える。
「人を傷つけると、自分も痛いよね」
お華を叩いた手よりも、心がズキンと痛む。
「お華さんが傷付く度に、みんなも痛いんだよ」
ハッと顔を上げ、お華は皆を見渡す。
怒りではなく、哀れむような悲しみを帯びた表情に眉を寄せた。
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