駆け抜けた少女【完】


視線が一斉に矢央に集中した。


「止めよう。 もう、苦しまないで」



矢央の瞳にもまた、涙が浮かんでいた。



「あなたに…何が分かるのっ」



睨まれようが、邪気を向けられようが怯まない。

今まで逃げてきた、お華という存在から、今は立ち向かわないといけないから。



「分かってあげたかった。 お華さんの苦しみも、悲しみも、私が少しでも受け止められていたら……そうしたら…」

「止めてっ!」



一匹の蛇が矢央に向かって牙を剥き出しにした。


シャア…と、大きく口を開きユラユラと足下にまで迫ってきているのに、矢央は逃げなかった。



「あなたなんて呼ばなけば良かった。 私がいるはずだった場所を、あなたが全て奪って行くのを見せられて…。
そんな私の気持ちを分かってやりたいなんて……」

「そうだよね。 お華さん、本当は…みんなを守りたいとかじゃなくて、一緒にいたかったんでしょう?」

「…………」



お華の瞳が、僅かに揺れた。



「最初は守りたかったのかもしれない。 だけど、どんどんみんなと距離が近付くにつれ、思ったんでしょう?
もう一度、みんなと…沖田さんと過ごしたいってっ…」



ポロポロと涙が溢れてくる。

切に伝わってくるのだ、お華の切ない想いが。


以心伝心。

一心同体の彼女たちにだけ分かる、本当の苦しみだった。



「死んだしまった現実は受け入れたけど、同じ顔の私とみんなが一緒にいるのを見て、辛かったんだよね?
お華さんは、ずっと私といるのに気付いてもらえなくて、言葉も伝わなくてもどかしくて…寂しくて」



彼らを一番に想っているお華は、どんなに願っても、もう共に過ごすことができない。


それは死を覚悟した時に受け入れたつもりだった。

遠くから幸せを祈り、どうにか救いたいと願い、この時代に矢央を呼んだは良いものの、いつしかその願いは変化していった。


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