ふるふると首を振る藤堂。
「駄目…だよ。 それは…もうしないって…約束しただろ」
矢央の特殊な力は、以前も藤堂の傷を癒やしたことがあった。
その時、藤堂は傷すら消えたが、代わりに矢央にその傷と痛みが移るという結果になり暫く寝込む羽目になった。
あの時、己が負った傷に代わりに苦しむ矢央を見て心が痛み、藤堂は二度とその力を使わせまいと誓ったのだ。
「でもっ…でもこうしなきゃ、平助さんがっ」
「大丈夫。 僕は…これくらいじゃ…死なないよ」
辛いはずなのに、ふわりと笑ってみせる藤堂が逆に痛々しい。
「矢央、平助の言う通りだ。 平助は死なない。 お前を悲しませるようなことはしねぇよ。 なあ…平助?」
矢央の肩に手を置き、藤堂にふっかける。
すると藤堂は、力なく笑い。
「ははは。 人が悪いよね、新八…さんは」
その言葉を最後に、完全に気を失った。
永倉は藤堂を背負いながら、外へと出るために歩き出し、その二人を守ろうと辺りを警戒する矢央。
早く、早く、と土方隊が来るのを待ち望む。
――――――――
表口で藤堂を戸板に乗せた時、矢央はある気配を感じ振り返る。
「どうした?」
一息ついていた永倉は、二階を見上げたまま固まる矢央に問うた。
「いる。 二階に、いる」
「あ? 近藤さん達か? そりゃいるだろ……って、おい矢央っ!」
息つく間なく矢央は二階へと階段を駆け上がって行った。
永倉の制止は聞こえていなかった。
ただ、彼の下へと急ぐばかり――――
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