「だあーっ! 何をもたもたやってんだっ! 体がなまっちまうぞ!!」

「てかさ、隊士ってこんだけ?」

新選組は準備万端整い陣を設けた。

その中を見回した藤堂は隊士達の数を見て落胆の色を浮かべる。


風邪や怪我などで、この度動ける隊士の数は僅か三十四名。



「市中に潜む浪士の数は約四十は超えてるらしいじゃねぇの」

「こっちの数より上回りますか」

「会津への伝令はどうなっている?」

「は。 昼前に会津藩へと走らせましたが未だ連絡はなし」


土方は渋い表情で考え込む。


新選組はこの度、会津藩らと共同作戦を取ることに決めたのだが、その肝心な会津藩からの連絡は未だになかった。


この頃、会津藩らはあろうことか新選組と共にするかどうかを話し合っている真っ最中。

今長州藩を刺激し煽るようなことになり、さらに状況が悪化しては困るという考えもあったが、

つい先日、近藤は進退伺いを出してしまっていたため、新選組が本気なのか、もしかしたら裏切るのではないかとも考えられていたなどとは、土方も思うまい。



「なぁ、土方さん」

「なんだ、永倉」

「会津藩を待っていても、ただ無駄に時間は過ぎるだけじゃねぇのかい」


既に隊士達の出陣準備は整い、今か今かと義気迫らん様子。


「そうだぜ! 弱腰を待ってたんじゃ、奴らにおめおめ逃げられちまうぜ?」

「左之さん左之さん、その弱腰が新選組の上司だって分かってて言ってる?」

「うっ……! ま、まあ、あれだ! もう我慢も限界だってこったぁ!」


原田の言う通りで、ただでさえ人数が少ない中での出陣で、勢いを無くしてしまうと…と考えると不味い。

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