夜になるのが少し遅くなり、夕闇に染まり始めた空を布団の中から眺めながら、はあと一つ大きな息をつく。


つい先程まで賑わいでいた部屋に、今は矢央ただ一人。


話しに花を咲かせていたところへ、山崎が一言かけたことから切羽詰まった慌ただしさへと突如変化したのである。



「……大丈夫かな……」


今もまだ慌ただしく、広間がある方からは隊士らの雄叫びまで聞こえる始末。


不安が募り、矢央は布団から抜け出し縁側に出た。



「矢央君、寝ていないと土方君に叱られますよ」

「山南さん……」


矢央の顔には疑問の色が浮かんでいた。

今は新選組幹部も隊士も広間に集まっているはずなのに、総長である山南が、どうして此処にいるのだろうと。


表情で読み取った山南は、眉を寄せて僅かに笑みを作った。


「ふふ。 だらしないことに、風邪をひいてしまってね。 今夜は君と同じで、屯所に留守番です」

「何かあったん…ですね」


この騒々しさで、今夜何かがあることは分かる。

最近の胸騒ぎは、今日のことだったのかと睫毛を揺らす矢央の隣に立ち並び、山南は冷たくなってきた風に頬を晒した。


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