「……ゥゥッ…」


薄闇色の蔵の中から、何とも言い難い呻き声が漏れていた。


天井から一本の縄で逆さ吊りされている男は、つい先程"古高俊太郎"と自白したばかり。


この男は今朝方、沖田と永倉から捕らえてきた男で、只今、土方により拷問を受けている。



蔵の中には土方と古高の二人で、土方は呻き声を上げるだけの古高を上から見下ろしていた。


「おいおい、古高さんよぉ。 まだおねんねするには、日が高いでしょうが」


プハーと紫煙を吐き出しながら、木刀で古高の体を揺すってみる。

「ウッ……」

「先程、あんたんとこを隈無く調べさせてもらったよ。 そしたらまあ、出るわ出るわ。 よくもまあ、あんだけ集めたもんだなぁ」


古高が営む古道具屋には、古高が集めた武器弾薬がたんまりとあった。

ただの古道具屋ではないと直ぐに分かり、土方は報告を受けた後に拷問を開始したのである。


「いってぇ、何を企んでやがる。 とっと吐いて楽になりてぇと思わねぇかい?」


呻き声は聞き飽きたとばかりに、土方は古高をいたぶった。


いつも険しい表情の土方だが、普段はそれほど恐ろしい存在でもない。

しかし、こういった時の土方は、まさに鬼だった。


「な…何も…知らん……」

「ほお。 この期に及んで、まだそう言えるかい」


笑いもせず、怒りもせず、ただ無表情。

土方は五寸釘を一つ手に取り掲げると、それを一切の躊躇いもなく古高の足裏に突き刺した。

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