夕刻が直ぐそこまで迫っていた時、俯く矢央を見つけた男は小さく息を吐き出した。


出掛けていた土方は、その場を通らないと自室に行けず仕方なく通り過ぎように歩みを進めたが。



ーーーたくっ、何だってぇんだ。


あからさまに落ち込んでいる矢央が気になり足を止めてしまう。


「寝てんのか?」

「……起きてますよ」

「だったら、何してる?」


返って来ないと思っていた返事が返ってくる。

ゆっくり顔を上げた矢央は、いつ間にか夕日に染まる空に気づき、長い間この場にいたことを思い出した。


「土方さんもご存知の方なんですか? お華さん……」


土方は、腕を組み体勢を傾け柱にもたれかかった。


「聞いたのか?」

「藤堂さんと永倉さんに……」

「あいつらか。 で、それがどうした?」


てっきり沖田から聞いたと思っていた予想は見事に外れた。

さも気にしていない素振りの土方に、矢央は不思議そうな目を向けた。


「土方さんは、お華さんのこと嫌いだったんですか?」


土方だけは雰囲気が違う、あまり悲しげな雰囲気を出さない。

だからこういった疑問が生まれたわけで、悪気があったわけじゃなかった。


「あ?」

土方に睨まれ、縮こまる矢央。

この人は睨むのが好きなのかと疑ってしまい、この壬生浪士組と団体は実は極悪集団なのかと疑ってしまう。