「体も拭ってやる。 まだ風呂にいく体力はねぇだろ」

か、体もっ!?


さすがにそれは嫌だと、暴れ出した矢央を見て土方はニヤリと笑う。

意地の悪い笑みだと思った。


「なあにガキの体を見てもなんも感じやしねぇよ。 それとも、山崎に頼むか?」

「俺が何か?」


粥を運んで来た山崎が、タイミング悪く部屋に入ってきて、尚更慌てる矢央。


「ど、どっちもヤです…」

「んなこと言っても、女中はいねぇからな」

「だから、何のお話を?」

「ああ、いやな、こいつの体を拭ってやろうとしてるんだが、この通りだ」


山崎の前には、土方から逃げようとひっくり返った亀のようにもがく矢央の姿があった。


その間抜けな姿に思わず笑ってしまいそうになるが、ぐっと呑み込み耐える。


「で、どっちがいい? 俺か、山崎かどちらを選ぶ?」

「だって……山崎さんは…」


確かに土方は、自分のような子供の裸を見たとこで何とも思わないかもしれない。


それはそれで、なんか悔しいけど……。


では山崎は、と考えて土方よりないと頭を振るう。


「言っておくが山崎は見た目若いが、俺より年上だぞ。 年の近さを気にしてんなら、やっぱり俺だな」

「………えっ?」

「その顔からして、やっぱり年が近いと思っていやがったな」

「俺は、これでも局長よりも上や」

「ええっ!?」


局長より上となると、山崎は確実に三十路は超えていることになる。

どう見ても二十代前半にしか見えない山崎に、矢央は衝撃を受けていた。

そして、そのまま結局二人が見ている前で土方に体を拭われてしまったが、もう羞恥すら感じなかったのは、


「山崎さんが、おっさんだった」

「うっさい、アホが」


衝撃が、あまりにも強かったからだろう。


.