心なしか元気のない声が気になるところ。

「矢央さんを追い詰めてしまった原因は、私にもあるんだと思うんです」


沖田さんに? そんなことない。


見えていないと分かりつつ、矢央は必死に首を振り否定する。
が、沖田は続けた。


蔵の扉に体を預け、冷たく小さな手を握り締めて思うこと。


「彼女…お華は、きっと私に会いに来てくれたんでしょう。 私がいつまでも彼女を引きずってるばかりに、彼女をこの世に止まらせてしまった。
そして、あなたをも巻き込んでしまった」


若い沖田らは互いに想いを募らせながらも、その想いを伝え合うことなく、先にお華は逝ってしまった。

強い想いが、お華を邪の道へと走らせてしまったのではないかと、今ならばそう思う。


「彼女を死に追いやり、そして今も救うことすら出来ない。 そして、あなたのことも守ってあげられなかった。 なんて不甲斐ない男なんでしょうね、私は」


段々に小さくなってよく声。

矢央には、沖田が泣いているように感じた。


同じように迷っている人が此処にいたのだ。

新選組頭一の剣士も、恋には弱いのだろう。


以前愛した女と、守ってやりたいと思う女の間で心が揺れ動く。


「……わた、しは…沖田さん達に出会えて良かったですよ」


振り絞って出した声はかすれていて、よく聞かないと上手く聞き取れない。

沖田は瞼を閉じ、矢央の言葉に意識を集中させた。


「お華さんに…利用されて連れて来られたとしても……私は、みんなに会えたことは嬉しいよ。私は、お華さんとは、分かり合えないかも…しれないけど、沖田さんは、沖田さんだけはあの人を見ててあげて下さい」


何度も恨んだ女性だが、お華も悩み苦しみこうせざる終えなかったのではないか。

一人で寂しくて、沖田を仲間を恋しく思い、己の力を使ってしまったのではないか。


矢央は、沖田に言った。


「私は大丈夫だから……。 お華さんと向き合って下さい」


沖田はゆっくりと瞼を持ち上げ、青が広がる空を見上げていた。

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