しかし受け取って良いのかと躊躇った。

自分は処罰を受けている身なのに、と。


「大丈夫。 これは、土方さんに頼まれたんです」


そんな訳ない。 沖田の明らかな嘘に、矢央は涙ぐむ。


「もう少し耐えれば、此処から出られますから頑張りなさい。 さあ、早くお食べ」


沖田の優しさに甘え、コクコクと頷きながらおむすびを食べる。

やたら塩がきいているおむすびだった。

塩っ辛い……なんて、思いながらも心は安らいだ。


握られた手はそのままに、沖田は話し出す。


「今日はね、天気が良いから布団を干してきました。 今日は気持ちよく眠れそうです」

「あ、そうそう。 平助さんがね、矢央さんを出せって土方さんに抗議したんですが、返り討ちにあってましたねぇ」

「そういえば、もうすぐ梅雨ですね。 矢央さんは、雨ってどう思います? 私はね、あまり好きではないです」


声が出ない矢央を気遣っているのか、沖田は好き勝手に喋る。

よくもまぁ、次から次に話題が出てくるなと関心しながら、矢央は相槌をうっていた。



「……どうしたらいいんでしょうね」


暫く黙っていたかと思うと、沖田は独り言のように呟いた。


.