時間の感覚が狂い始めた、三日目正午。


矢央は、壁に頭をもたれさせぼーっと小窓を見つめていた。

小窓には小鳥が二羽止まり、ピチピチと鳴いている。


それを見ることくらいしかやることがなくなった。


水は与えられるが、食べ物は与えられていない。

空腹感ですら麻痺していた。


「…………」


衰弱しきった体は、もう言葉すら発せられないほどだ。


いつになったら出してもらえるのだろう。

これが死に値する処罰だったのかと、溜め息を吐く。



―――トントン。


扉を叩く音に、ゆっくりと顔を向けた。


「矢央さん、生きてますか?」


扉の端に物を出し入れ出来るだけの小さな扉があり、そこが開き外の光が蔵の中に差し込む。

そして、この声や口調からして訪ねてきたのが沖田だと分かった。


「…………」


"沖田さん"と、唇は名前の形に動くが声は出なかった。


「生きているなら、這いつくばってでも此方に来て下さい」


酷い言いようだなと、矢央は苦笑いしながらも、鉛のように重たい体を精一杯動かし扉の前にたどり着いた。


気配でそれを読み取ったらしい沖田の綺麗な手が蔵の中に差し入れられ、矢央はその手に恐る恐る触れてみる。


ぎゅっと、握り替えされた温もりに、ああまだ生きていると実感した。


「可哀想に、こんなに痩せてしまって。 お腹すいたでしょ、これを食べなさい」

「………」


それは、沖田が握ったおむすびで、握り慣れていないのか形は不格好。

クスリと、笑みが零れる。


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