聞き覚えのある、懐かしい声につられて矢央は顔を上げた。


「矢央ちゃんっ!」

刹那、抱きしめられた。


何が何だか分からず戸惑う矢央の視界に、クックックッと肩を揺らしている永倉が映る。


「驚いて泣き止むたぁ、赤子みてぇな奴だな」

「なっ……!」


赤子と言われ腹が立ったが、それよりも気になるのが己を抱きしめる男のことだ。


「あ、あのっ……」

「やっと…やっと会えた」


ゆっくりと離れた体、視界に映る顔を見て、また涙が込み上げてくる。


永倉が呼んで来たのは、藤堂平助だった。

いつでも、ただ一人だけ矢央の味方であり続けてくれた人。

半年ぶりの再開だった。


「平助さん……」

「矢央ちゃん。 ずっと捜してたんだから…。 帰って来てくれたんだね」


ずっと捜していた。

愛しい少女が目の前にいる。

藤堂は、永倉に矢央が帰って来たことを告げられ嬉しさに部屋を飛び出した。

屈み込む矢央を見つけ思わず抱きしめてしまうほど嬉しさがこみ上げ、顔を見て安堵する。


「おかえり。 矢央ちゃん」

「平助さ…ん。 ただいまぁぁっ…」


おかえり。 その言葉が胸に染みる。

帰りを待ってくれていたのだと、帰ってこれたのだと嬉し涙を流した。


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