この頃の新撰組は、隊士の半数が攘夷に傾き次々と脱走していた。

人数が少なくなり、毎日の隊務にも支障が出ることもあった。

市中見回り、怪しい浪人達を取り締まるという佐幕的行為と、攘夷とは何たるかを悩む近藤。

我らは武士であるという誇りはあるが、自分達が振るう剣は何のためにあるのか。


「どうしたものか……」


頭である己がこれだから、隊士達に亀裂が走るのだろうと近藤は深く息を吐いた。


ふと脳裏に浮かんだ、暫く見ていない少女の顔。


「矢央君も、こうして悩み苦しんでいたとしたら…」


あの小さな体で悩み苦しんでいた少女の気持ちが、今になって少し分かるようだった。

この先の新撰組を、どう導けば良いのかと。


「元気にやっていると良いのだが」


近藤は小さく呟き、暫し休もうと体を横たわらせたのであった。


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