何時それが己に回ってくるのかと思うと、怖くて堪らなくなる。

沢山血を浴びてきた己が、拷問が怖いと怯え逃げる毎日なのだ。


「いつか、帰れてたらいいね」


人斬りと恐れられる以蔵に、こうして普通に接してくれるのは、今は矢央だけかもしれないと以蔵は思った。


龍馬には、長く会っていない。

すると、毎日が一人だ。

時々龍馬から送られてくる文を、矢央を通し長州に渡す。


今日も、その文を渡しに来たのだった。


「その時が来たら、おまんも…着いて来るがか?」


俯く以蔵のチラリと覗く耳が赤い。


「ふふっ。 以蔵さんや坂本さんの故郷かぁ。 行ってみたいな」

「…ええとこぜよっ! 京みたいに華やかじゃないけども、ええとこぜよ…」

「うん! じゃあ、約束ね?」


矢央は慌てる以蔵に、小指を差し出す。


「……?」

それが何か分からず、首を傾げた以蔵の小指に自ら小指を絡めると、


「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーますっ、指切った!」

「おっ、恐ろしい歌だな……」

「あれ? 知らないの?」

「知らん……」


とりあえず約束だ、と矢央は笑顔を向ける。

この約束が果たせるなら、今度こそ人を守るための剣を振ろうと誓う以蔵。


ーーーいつか、きっと……。


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